くろねこルー
小さな山小屋にルーという黒猫が住んでいました。
ある冬の日、おばあさん猫がルーにこんな話をしました。
「雪山のてっぺんには、“ねがい星のかけら”が落ちているんだよ。
それを見つけたら、たったひとつ、どんな願いでも叶うんだってさ。」
ルーは空を見上げて、そっとつぶやきました。
「もし願いが叶うなら、ぼく……」
でもその願いは、誰にも聞こえませんでした。
次の日、ルーはひとりで旅に出ることにしました。
冷たい風が吹くなか、小さな体で雪山を登りはじめたのです。

こおりのうさぎ
とちゅうでルーは、こおりのように透きとおった雪うさぎに出会いました。
「どこに行くの?」と雪うさぎ。
「ねがい星のかけらを探してるんだ」とルー。
雪うさぎはくすりと笑って言いました。
「それなら、いちばんさむい谷を越えないとね。でも気をつけて。心が冷たくなりすぎると、星のかけらは見えなくなるよ。」

ふぶきのこども
雪が激しくなると、吹雪のこどもが現れて、風をびゅーびゅー吹きかけました。
「にゃにゃっ! 寒すぎるよ!」とルーが言うと、吹雪のこどもはにやりと笑って言いました。
「さむいのがイヤなら帰ればいい。願いなんて、だれも叶えてくれやしないさ。」
でもルーは、しっかりと冷たい雪の上に足をふんばって言いました。
「それでも、ぼくは行くんだ。」
吹雪のこどもは目をまるくして、風を止めました。
「……きみは強い心を持っているね。ここを通してあげるよ。」

ちょうじょうにて
やがてルーは、山のてっぺんにたどり着きました。
そこで見つけたのは、小さな光る石。
ルーはそれを前にして、やっと声に出しました。
「ぼくの願いは……
ぼくを大切にしてくれたおばあさん猫が、ずっと元気でいられますように。」
石はほのかに光って、空へふわりと浮かびました。
そして、星のように夜空に溶けていきました。

そして、、、
次の朝、村に帰ったルーは、おばあさん猫に抱きしめられました。
「ルー、どこへ行ってたの? 寒くなかった?」
ルーは「にゃあ」と鳴いて、しっぽをふりふり。

その日の夜、空にはひときわ大きな流れ星がひとつ、すうっと光って流れました。
ルーは静かに目を細め、暖かい寝袋の中に丸くなって眠りました。

おしまい
コメント