魚が大好きなブラッキー
小さな港町に、ブラッキーという黒猫がすんでいました。ブラッキーは魚が大好き。
でも、魚屋さんの魚や、漁師が釣りあげた魚は勝手に食べられません。人間に見つかったら、「こらっ、泥棒猫!」とおこられるからです。
たまに、やさしい人間が魚をわけてくれますが、ぜんぜん満足できないのです。
「ああ!おなか一杯 魚が食べたいなあ!」
そんなある日、かもめのポウが教えてくれました。
「海の向こうには、おいしい魚がたくさんいる島があるんだって!」

ブラッキーは驚きました。それはすばらしい!
「でも、どうやって行けばいいの? ぼくは猫だよ。泳げないよ。」
「泳げない猫も、ちょっとずつ練習すれば泳げるようになるかもよ?」
ポウはいたずらっぽく、ウインクしながら言いました。
ブラッキー泳ぐ練習をする
ブラッキーは、毎晩こっそり浜辺に行っては、足を海にひたしてみました。
黒い毛が濡れて、体に張り付きます。
「気持ち悪いよ~」
「力を抜いて海に浮かぶんだ。」ポウのアドバイスです。

ブラッキーは、毎日海に行き、少しずつ海に入って浮かびました。
波がこわくて、最初はちっとも進めませんでした。
やがてブラッキーは、犬かきのように少しずつ泳げるようになり、波にもなれてきました。
ブラッキー海を泳ぐ
そしてある満月の夜——。
「行くよ、ポウ!」
「おお!決心したのか!」
ポウは空からブラッキーを見守ります。
波は高く、潮も速く、ブラッキーは何度も流されそうになりました。
でも、あきらめませんでした。星の光が海に道をつくってくれているように見えました。
やがて月の光に照らされた海が、ブラッキーをやさしく包んでくれました。

夜が明けるころ、ブラッキーはとうとう魚の島にたどり着きました。
そこには、誰もいない浜辺と、透きとおった海、そして、キラキラ光る小魚たちがいっぱい!
ブラッキーは魚をひとくち食べて、にっこり笑いました。
「がんばってよかった。」
その姿を見てポウはつぶやきました。
「あの海を越えるなんて…本当によくやったな。」
それからブラッキーは、満月の夜になると、魚の島に泳いでいくようになりました。
港の人たちは気づきました。
「あの黒猫、最近なんだか大きくなって、つやつやしてるね。」
ブラッキーはちょっぴり誇らしげにしっぽを立てて、今日も港を歩きます。

おしまい
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