
はじめに、黒助がまだ子猫だった頃の話をします。
黒助がまだ赤ちゃんの頃、私はあるお店のお手伝いをしていました。 黒助をひとりで置いておくわけにもいかず、お店に連れて行きました。
黒助はお客さんたちに大人気! でも中には「黒猫は不吉なんだよ~」なんて言う人もいました。
そう、黒猫は不吉なんだ…私が子どもの頃にも、そんな話を聞いていました。
ちょうどそのころ、祖母が亡くなり、お葬式のために母親の実家(祖母のおうち)へ行くことに。その時も黒助を家に置いておけず、一緒に連れて行きました。「お葬式の場に黒猫を連れて行ったら、何か言われちゃうかなあ…」とドキドキしていました。
母の親戚たちは、私が黒助を連れてきた事を笑いながら、
「黒猫は縁起がいいんだよ。『商売が黒字になる』っていうじゃないか!」と迎えてくれました。
同じ日本の関東地方での出来事です。
「どういうこと?こんなに違う反応があるなんて!」と思いました。
黒猫は不吉?幸運?

ねえ黒助。この前、昔から黒猫は不吉って言われるのはどうしてってお話をしたよね。

そうだニャしろさん。黒猫が不吉ってのは、ほんとに誤解だったニャ。実は黒猫は幸運って言われる国のほうが多いんだニャ。

やっぱりそうなのね?

そうそう。たとえばイギリスでは「黒猫が家に入ると幸せが来る」って信じられてるニャ。日本でも黒猫=福を呼ぶ存在なんだニャ。
日本ではそもそも「幸運の猫」だった
黒い招き猫

日本では昔から黒猫は福猫として重宝されていたニャ。夜でも目が見えることから、魔除けや幸運、商売繁盛の象徴とされていたんだニャ。

へぇ~、そんなに縁起がいい存在だったんだ。

その名残が今でもあるニャ。招き猫って、白や金もいるけど、黒い招き猫は魔除けや厄除けのご利益があるって言われてるんだニャ。

うん。たしかにそうね!うちにもあるし。

そうニャ。明治40年前後までは、黒猫が福猫であるという記述がたくさん残っているんだニャ。黒猫は不吉というイメージは、それ以降に外国から入ってきた考え方だニャ。
黒猫の歴史をたどる
最古の記録

そんな幸運の黒猫の歴史を、是非知りたいわ。

まかせろニャ!日本人が猫を飼っていた最古の記録が、平安時代初期の『寛平御記(かんぴょうぎょき)』にあるんだニャ。書いたのは宇多天皇。宇多天皇が17歳の時、父親から譲られた黒猫を飼っている事が書いてあるニャ。
- 宇多天皇は黒猫を「丸くなった姿は黒い宝玉、歩く姿は雲の上を渡る龍のごとし」「ほかのどの猫よりネズミ捕りが上手」などと書いて、それはもう大変なべた褒めようだったニャ。
- ごはんは、なんと当時では高級品の「乳粥」を食べさせていたそうニャ!
- …しかし「父上からいただいたので仕方なく飼っている!」という記述もあり、そのツンデレぶりがうかがえるニャ~。


ぷぷっ。黒猫の前では天皇もそんな風になってしまうのね。恐ろしや黒猫!
江戸時代に黒猫ブーム

さらに江戸時代になると「黒猫を飼うと労咳(結核)が治る」ってうわさが広まって、黒猫を飼うブームが起きたんだニャ。

病気まで治すなんて…なぜそんなことに?

特効薬のなかった時代、人々は黒猫の福を呼ぶ力に希望を託したんだニャな。これは古文書などの記録はないけど、言い伝えで残っている話だニャ。
- 「黒猫を抱いているときに自分の背中にお灸をすえると治る」という迷信があったそうニャ。

黒猫を抱きながら背中にお灸なんて…難易度が高いわねえ。元気な人でもキツイんじゃないかな。


そうニャ。有名な新選組の沖田総司が「黒猫を斬ろうとした」というお話があるんニャけど…
- 労咳(結核)を患い、その迷信にあやかろうと、誰かが黒猫を庭に連れてきた。しかし労咳で体力が落ちてしまった沖田は、なかなか猫を捕まえられず抱く機会がない。そんな猫に業を煮やし、斬りかかったのかもしれない、という説なんだニャ。
夏目漱石の猫

そして明治時代、夏目漱石が黒猫を飼っていたのは有名な話ニャ。

夏目漱石は精神の病で苦しんでいたけど、黒猫が家に来てから回復したそうね。
- 千駄木の家に黒い子猫が迷い込んで来て、追い出しても戻ってくる。出入りしていた按摩のお婆さんに「爪先まで真っ黒なこの猫は福猫!飼えば良いことがありますよ。」と言われ、漱石の奥さんがゴハンをあげて大事にしたんだそうニャ。
- その後漱石が書いた小説『吾輩は猫である』が大ヒット!
- モデルとなったこの猫は、最後まで名前がなかったんだニャ。物語の冒頭の「名前はまだ無い」という有名な一文は、漱石が実際に猫に名前をつけずに「猫」と呼んでいたことに由来してるらしいニャ。


この猫が亡くなった際、漱石は大変悲しんで、親しい友人たちに「うちの猫が亡くなりました」という死亡通知書を送ったんだニャ。

この猫のお墓は、漱石山房記念館の隣にある「漱石公園」にあるのよ。これは猫を含む、夏目家で飼っていたペットを供養するために妻の鏡子が建立したものだそうよ(戦災で失われたが、残欠を利用して復元されたもの)。
黒猫 その癒しと幸運

そう考えると、黒猫って昔も今も、人の心を癒してくれる存在ね。

そのとおりニャ。黒猫にとって癒しと幸運は永遠のテーマニャ。時代を超えて、福を運ぶのがボクたちの使命ニャ。

ほんと、黒助がいるだけで家の空気がまろやかになるもんね。

それが黒猫が福を呼ぶ証拠ニャ。おやつのかつおぶしも増やしてもらえると、さらに幸運度アップニャ。

はいはい。
しろさんのまとめ
黒猫は昔から福猫!
平安時代の『寛平御記』に黒猫の記録があり、江戸時代には病気平癒のご利益を信じて黒猫を飼う人が続出。夏目漱石も小説家として成功したのは黒猫のおかげ!!
そして黒い招き猫のように、魔除け・厄除けの象徴として現代にも伝わっています。
黒猫は不吉というのは後から入ってきた迷信。
本来、黒猫は福を呼ぶ存在であり、癒しと幸運の象徴です。

黒猫を見かけたら…それはきっと、あなたに福を届けに来たサインです。
黒助のひとこと

千年前も今も、黒猫は福猫ニャ。信じた人から幸せになるニャ!




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